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2024/05/15 04:34 |
オーディエンス




どうして。

どうして、現実はこうも残酷なのだろう。





揺れるバスの中で、私は必至に歯を食いしばっていた。

そうでもしていなければ、今にも決壊してしまいそうだった。

いっそ、そのままばらばらになって、跡形もなくなってしまえばいい。

そうしたら、今日の取り返しのつかない失態も、帳消しにしてしまえるのではないか。





――妹に、ならない?





天使の囁きが、まだ耳に残っている。

耳の奥にこびりついて、わんわんと不愉快な残響を揺らめかせている。





なれるはずが、ない。





私が。

この、私が。

天使に近づけるはずがない。

こちらにおいでと、呼び寄せてもらえる資格なんかないのだから。





どうして。





どうして、そんなに優しい言葉をかけるのですか。

本当は、そう詰りたかった。

理解できなかった。

出会ったときからずっと、あの人はずっと、私にとっては、まるで異世界の人間で。





どうして。





どうして、私を妹になんか。

妹にしたいだなんて、言ったのだろう。あの人は。

どうして、よりによって、あの人だったのだろう。

あんな話を聞かせて、私は一体何がしたかったのだろう。

あの人に、一体何を求めていたのだろう。

何も知らないあの人に。

いまだ、輝き続ける純白の白地図を握り締めている人に。





分からない。





分からない。あの人が。自分自身が。

私は。

私は――。







ふと顔を上げれば、バスは駅前のロータリーに滑り込もうとしていた。

このバスは、ここが終点。





では、私は?





私の終点は何処なのだろう。

私は何処にたどり着くのだろう。





バスの運転手に定期を見せて、バスを降りる。

見知ったはずの場所なのに、毎日のように通る場所なのに、心もとなくて、歩き出すのが怖かった。

きらびやかなイルミネーションは、少しも私の心を浮き立たせはしない。

宝石箱をひっくり返したような街。

楽しそうな笑い声、幸せそうな笑顔。

私は、たった一人で、壁の向こうからその光景を眺めている。

一枚の絵画に入り込めない私。

私は、観客だった。





観客でしか、なかった。










----------------



突発的に書きたくなって、瞳子を。

祐巳と別れた後のつもりです。

やってしまった感のある小話になってしまったような(汗)

頑張れ、瞳子。
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2006/01/12 00:00 | Comments(0) | TrackBack() | SS

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