ムウ・ラ・フラガ、お誕生日おめでとうー!!
別館にて何やらやらかしておりますが。
もう、この際一緒でもいいかと思いつつある響であります。
先達もいるしな・・・。
てなわけで。
今日はムウさん生誕を祝したSSです。
例によって、リリアンSEED。
BLは含んでおりませんが、女体化ありのGSEEDパラレルなので。
苦手な方は回避願います。
単に、HTMLにする気力がないだけというのはここだk(撃滅)
― ささやかなもの ―
「それにしても、大量ね」
テーブルの上に山積みにされたプレゼントの山を見て、キラが呟く。
うんざりとでも言いたげな口ぶり。
それに続いて、隣から溜息が発せられ、ムウは視線をそちらに動かした。
ムウの右隣。
眉間に皺を寄せながら、紅茶を飲んでいる少女。
彼女のそういう顔はよく見るが、強張ってしまわないのかと時々思う。
以前その疑問を口にしたら、物凄く嫌そうに顔を顰められた。
そういう表情も嫌いではないけれど。
笑えばいいのになといつも思う。
その方が可愛いのに、とか。
「持って帰るつもりなのか」
ムウの思考があらぬ方向に向かっていると、今度はカガリが口を開いた。
口調からして、大体予想はついていそうなのに。
わざわざ聞くというのは、何でだろう。
「勿論。まさか、皆に配るわけにもいかないし。
ゴミ箱に突っ込んで帰るわけにもいかないでしょ」
「当然です」
冷たい声が、淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
ティーカップの底がソーサにぶつかって、硬質な音を発生させた。
ムウのすぐ側から聞こえてきたそれらに、ムウは肩をすくめる。
なんだか、不穏な空気だ。
ちらと視線をめぐらせば、室内の面々はムウの右隣に注意を傾けているようだった。
そこにいるのは、理知的な眼差しと涼しげな容貌の主。
名を、ナタル・バジルールという。
別称は、黄薔薇のつぼみ。
遠慮なしに彼女に接する人間は、ムウの姉だった人やその親友が卒業した今、最早ムウ一人であるといっても良い。
気難しいところのある彼女のことを理解しているから、周囲は誰も踏み込まないのだ。
それは遠ざけているというものではなく、それが必要であるからというだけのこと。
先代の薔薇さま方は、だから特殊な部類の人たちなのだ。
そして、今やただ一人となった、特殊な部類の人間であるところのムウは。
何も言わず、ただ彼女の横顔を見ているだけだった。
美しい曲線を描く頬や。
濃い陰を落とす、長くて細い睫毛だとか。
紅をさしているかのように鮮やかな、薄い唇を。
まじまじと観察しているのであった。
「ちょっと、黄薔薇さま。
あなた、話を聞いていて?」
「何、紅薔薇さま」
「こいつはなーんにも聞いてないぞ、キラ。
自分の妹が美人だからって、見惚れているような人間だからな」
カガリの言葉に、ナタルがムウの方を向いた。
目を見開いて、頬を赤くして。
思わずにっこりと微笑むと、あからさまに顔を背けられた。
そんなに可愛い反応をされると、構いたくなってしまうのだけれど。
「ナタルに見惚れていたの?」
「ばれたか」
「なんだ、本当にそうだったのか」
「妹は可愛いものって、相場が決まってるじゃない。
紅薔薇さまだって、しょっちゅう妹を構っていらっしゃる。
白薔薇さまのところは、妹の方が積極的みたいだけれど」
紅と白の薔薇さまとそのつぼみたちが、揃って顔を赤くした。
なるほど。
心当たりはあるわけだ。
可笑しくて、笑いがこみ上げてくる。
抑えきれなくて、くくっと引き攣ったような声が漏れた。
睨まれるけれど気にしない。
そういう風にはできていないから。
「まぁ、それはともかく。
貰うにしても、限度があるんじゃないかしらね。
誰彼構わず貰ったりして」
「くれるって言うから貰っただけよ。
彼女たちは私からの見返りを期待しているわけじゃないからね。
渡して、そこで完結」
「そうかも知れないがな」
「そういうお二方だって、バースデーには随分と頂き物をしたようだけれど」
「量が違う」
「一つでも貰ったら、後は同じよ」
不毛な会話だな、とムウは思った。
今更、一人一人に返却して回るわけにもいかない。
第一全員の顔と名前を把握しているわけではないし。
二人も、そうしろと言いたいわけじゃないと思う。
ムウがプレゼントを貰ったことを、咎めたいわけでもないだろう。
では、何故?
そんなことをいちいち聞かずとも、何となくは気づいていた。
原因はムウの隣でただならぬ空気を漂わせている人。
「ま、ご心配なく。
あとの始末はきちんとやるから」
「そう?それじゃ、今日はこの辺でお開きにしましょうか」
「異議なし。じゃぁ、あとのことは黄薔薇さまに任せて。
ミリィ、フレイ、出るぞ」
「イザークとニコルも、帰りましょう」
戸惑う妹たちを押し出して、キラとカガリが部屋を出て行く。
テーブルの上のカップはそのまま。
「ごきげんよう」と慌しく挨拶を交わした後、ビスケット扉が閉められた。
残されたのは、黄薔薇の二人だけ。
「ナタル」
しんと静まり返った部屋の中に、妙にムウの声が響いた。
ナタルはびくりと肩を震わせる。
その肩に、そっと手を置いて。
立ち上がり、ムウは後ろを向いた。
椅子が音を立て、そしてまた静寂が訪れる。
「言いたいことがあるのなら、ちゃんと言って。
どうも、私はキラやカガリとは違って、気配りに欠けるところがあるみたいだから」
自覚がないから厄介なのだろう。
そう思うけれど、気がついた時には、いつもことが済んでしまった後なのだ。
諦めているつもりはないけれど。
いつになったら直るのか、見当がつかないのは確かだ。
「申し訳ありません、お姉さま」
黙っていたら、ぽつりとナタルが呟いた。
ムウは首をかしげ、俯いているナタルを横目で見る。
「それが、ナタルの言いたいこと?」
「いいえ。そうではなくて。
なんだか、色々と気を使わせてしまったようですので」
「私じゃなくて、あの二人にね。
でも心配要らないから。
ちゃんと伝わってると思うし」
あの二人のことなら、心配要らないと思う。
明日になって「ありがとう」などと言おうものならば、具合でも悪いのかとおかしな心配をされるか。
「何のこと?」と首を傾げられるに違いない。
「で?ナタルさんの不機嫌の原因は、私?
それとも、このプレゼント?」
「どちらもです。いえ、しかし、直接的な因果関係があるわけでは」
どちらもか。
ナタルの肩から手を離して、前を向く。
テーブルの上には、依然としてムウ宛のプレゼントが鎮座していた。
「今日は、お姉さまの誕生日です」
「そうだね」
「だから・・・・・。だから、プレゼントを・・・・・」
「えっ」
驚いて、視線をナタルに向ければ。
ナタルはさらに俯いていて、耳を真っ赤に染め上げていた。
たぶん顔も赤いはずだが、ムウからはそれは見えない。
「渡したいのに、渡せなくて。
私はお姉さまの妹なのに」
「そっか」
「重ね重ね、申し訳ありません」
「馬鹿ね、ナタルは。
おめでとうって言ってくれればいいのに」
ムウの、一番欲しいもの。
ナタルから贈られて嬉しいもの。
それはたった一つで、その他のものは全部それに付随するものでしかない。
貰えば勿論嬉しいに違いないけれど。
ナタルが微笑んで、寿いでくれればそれだけで。
それだけで、胸が満ちていくように思えた。
顔を上げたナタルが、ムウを見る。
視線が合って、ほんの少し口元を緩めて。
「お誕生日、おめでとうございます」
「ん、ありがとう」
誕生日、おめでとう。
あなたと出逢えた偶然に感謝の口づけを。
あとがき
フラガの兄さん。お誕生日おめでとう。
今回も大遅刻決定で、しかもリリアンSEEDでお届けの、誕生日記念SS。
基本的な情報が抜け落ちているざる頭ですので。
その辺はご容赦を願いたく存じますです・・・・・(平伏)
ショパンを聞きながら書くこととなったこのSS。
そのせいか、ほんのり切なく甘めです。
リリアンじゃなくて、普通に祝えよというツッコミが彼方から聞こえるような気もしますが。
その辺は全力全速をもって回避ということで。
一つ、よろしく。
しかしながら。
リリアンは、楽しい。いつもながら、すごくいい。
最近こちらには手を出してませんでしたが。
ぼちぼち、別館にも手を加えていきたいなと思ったり思わなかったり(どっちだ)
何はともあれ。
フラガさん、お誕生日おめでとう!
祝うことに意義があるんだ。きっとそうだ。
別館にて何やらやらかしておりますが。
もう、この際一緒でもいいかと思いつつある響であります。
先達もいるしな・・・。
てなわけで。
今日はムウさん生誕を祝したSSです。
例によって、リリアンSEED。
BLは含んでおりませんが、女体化ありのGSEEDパラレルなので。
苦手な方は回避願います。
単に、HTMLにする気力がないだけというのはここだk(撃滅)
― ささやかなもの ―
「それにしても、大量ね」
テーブルの上に山積みにされたプレゼントの山を見て、キラが呟く。
うんざりとでも言いたげな口ぶり。
それに続いて、隣から溜息が発せられ、ムウは視線をそちらに動かした。
ムウの右隣。
眉間に皺を寄せながら、紅茶を飲んでいる少女。
彼女のそういう顔はよく見るが、強張ってしまわないのかと時々思う。
以前その疑問を口にしたら、物凄く嫌そうに顔を顰められた。
そういう表情も嫌いではないけれど。
笑えばいいのになといつも思う。
その方が可愛いのに、とか。
「持って帰るつもりなのか」
ムウの思考があらぬ方向に向かっていると、今度はカガリが口を開いた。
口調からして、大体予想はついていそうなのに。
わざわざ聞くというのは、何でだろう。
「勿論。まさか、皆に配るわけにもいかないし。
ゴミ箱に突っ込んで帰るわけにもいかないでしょ」
「当然です」
冷たい声が、淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
ティーカップの底がソーサにぶつかって、硬質な音を発生させた。
ムウのすぐ側から聞こえてきたそれらに、ムウは肩をすくめる。
なんだか、不穏な空気だ。
ちらと視線をめぐらせば、室内の面々はムウの右隣に注意を傾けているようだった。
そこにいるのは、理知的な眼差しと涼しげな容貌の主。
名を、ナタル・バジルールという。
別称は、黄薔薇のつぼみ。
遠慮なしに彼女に接する人間は、ムウの姉だった人やその親友が卒業した今、最早ムウ一人であるといっても良い。
気難しいところのある彼女のことを理解しているから、周囲は誰も踏み込まないのだ。
それは遠ざけているというものではなく、それが必要であるからというだけのこと。
先代の薔薇さま方は、だから特殊な部類の人たちなのだ。
そして、今やただ一人となった、特殊な部類の人間であるところのムウは。
何も言わず、ただ彼女の横顔を見ているだけだった。
美しい曲線を描く頬や。
濃い陰を落とす、長くて細い睫毛だとか。
紅をさしているかのように鮮やかな、薄い唇を。
まじまじと観察しているのであった。
「ちょっと、黄薔薇さま。
あなた、話を聞いていて?」
「何、紅薔薇さま」
「こいつはなーんにも聞いてないぞ、キラ。
自分の妹が美人だからって、見惚れているような人間だからな」
カガリの言葉に、ナタルがムウの方を向いた。
目を見開いて、頬を赤くして。
思わずにっこりと微笑むと、あからさまに顔を背けられた。
そんなに可愛い反応をされると、構いたくなってしまうのだけれど。
「ナタルに見惚れていたの?」
「ばれたか」
「なんだ、本当にそうだったのか」
「妹は可愛いものって、相場が決まってるじゃない。
紅薔薇さまだって、しょっちゅう妹を構っていらっしゃる。
白薔薇さまのところは、妹の方が積極的みたいだけれど」
紅と白の薔薇さまとそのつぼみたちが、揃って顔を赤くした。
なるほど。
心当たりはあるわけだ。
可笑しくて、笑いがこみ上げてくる。
抑えきれなくて、くくっと引き攣ったような声が漏れた。
睨まれるけれど気にしない。
そういう風にはできていないから。
「まぁ、それはともかく。
貰うにしても、限度があるんじゃないかしらね。
誰彼構わず貰ったりして」
「くれるって言うから貰っただけよ。
彼女たちは私からの見返りを期待しているわけじゃないからね。
渡して、そこで完結」
「そうかも知れないがな」
「そういうお二方だって、バースデーには随分と頂き物をしたようだけれど」
「量が違う」
「一つでも貰ったら、後は同じよ」
不毛な会話だな、とムウは思った。
今更、一人一人に返却して回るわけにもいかない。
第一全員の顔と名前を把握しているわけではないし。
二人も、そうしろと言いたいわけじゃないと思う。
ムウがプレゼントを貰ったことを、咎めたいわけでもないだろう。
では、何故?
そんなことをいちいち聞かずとも、何となくは気づいていた。
原因はムウの隣でただならぬ空気を漂わせている人。
「ま、ご心配なく。
あとの始末はきちんとやるから」
「そう?それじゃ、今日はこの辺でお開きにしましょうか」
「異議なし。じゃぁ、あとのことは黄薔薇さまに任せて。
ミリィ、フレイ、出るぞ」
「イザークとニコルも、帰りましょう」
戸惑う妹たちを押し出して、キラとカガリが部屋を出て行く。
テーブルの上のカップはそのまま。
「ごきげんよう」と慌しく挨拶を交わした後、ビスケット扉が閉められた。
残されたのは、黄薔薇の二人だけ。
「ナタル」
しんと静まり返った部屋の中に、妙にムウの声が響いた。
ナタルはびくりと肩を震わせる。
その肩に、そっと手を置いて。
立ち上がり、ムウは後ろを向いた。
椅子が音を立て、そしてまた静寂が訪れる。
「言いたいことがあるのなら、ちゃんと言って。
どうも、私はキラやカガリとは違って、気配りに欠けるところがあるみたいだから」
自覚がないから厄介なのだろう。
そう思うけれど、気がついた時には、いつもことが済んでしまった後なのだ。
諦めているつもりはないけれど。
いつになったら直るのか、見当がつかないのは確かだ。
「申し訳ありません、お姉さま」
黙っていたら、ぽつりとナタルが呟いた。
ムウは首をかしげ、俯いているナタルを横目で見る。
「それが、ナタルの言いたいこと?」
「いいえ。そうではなくて。
なんだか、色々と気を使わせてしまったようですので」
「私じゃなくて、あの二人にね。
でも心配要らないから。
ちゃんと伝わってると思うし」
あの二人のことなら、心配要らないと思う。
明日になって「ありがとう」などと言おうものならば、具合でも悪いのかとおかしな心配をされるか。
「何のこと?」と首を傾げられるに違いない。
「で?ナタルさんの不機嫌の原因は、私?
それとも、このプレゼント?」
「どちらもです。いえ、しかし、直接的な因果関係があるわけでは」
どちらもか。
ナタルの肩から手を離して、前を向く。
テーブルの上には、依然としてムウ宛のプレゼントが鎮座していた。
「今日は、お姉さまの誕生日です」
「そうだね」
「だから・・・・・。だから、プレゼントを・・・・・」
「えっ」
驚いて、視線をナタルに向ければ。
ナタルはさらに俯いていて、耳を真っ赤に染め上げていた。
たぶん顔も赤いはずだが、ムウからはそれは見えない。
「渡したいのに、渡せなくて。
私はお姉さまの妹なのに」
「そっか」
「重ね重ね、申し訳ありません」
「馬鹿ね、ナタルは。
おめでとうって言ってくれればいいのに」
ムウの、一番欲しいもの。
ナタルから贈られて嬉しいもの。
それはたった一つで、その他のものは全部それに付随するものでしかない。
貰えば勿論嬉しいに違いないけれど。
ナタルが微笑んで、寿いでくれればそれだけで。
それだけで、胸が満ちていくように思えた。
顔を上げたナタルが、ムウを見る。
視線が合って、ほんの少し口元を緩めて。
「お誕生日、おめでとうございます」
「ん、ありがとう」
誕生日、おめでとう。
あなたと出逢えた偶然に感謝の口づけを。
あとがき
フラガの兄さん。お誕生日おめでとう。
今回も大遅刻決定で、しかもリリアンSEEDでお届けの、誕生日記念SS。
基本的な情報が抜け落ちているざる頭ですので。
その辺はご容赦を願いたく存じますです・・・・・(平伏)
ショパンを聞きながら書くこととなったこのSS。
そのせいか、ほんのり切なく甘めです。
リリアンじゃなくて、普通に祝えよというツッコミが彼方から聞こえるような気もしますが。
その辺は全力全速をもって回避ということで。
一つ、よろしく。
しかしながら。
リリアンは、楽しい。いつもながら、すごくいい。
最近こちらには手を出してませんでしたが。
ぼちぼち、別館にも手を加えていきたいなと思ったり思わなかったり(どっちだ)
何はともあれ。
フラガさん、お誕生日おめでとう!
祝うことに意義があるんだ。きっとそうだ。
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