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2024/05/15 04:52 |
遠い家灯り
令、由乃SS  ほのぼの



修学旅行から帰ってきて。

出迎えてくれた令ちゃんと。




  ―遠い家灯り―







バスに揺られて、うとうとしながらK駅に辿り着いた。

眠たい目を擦りながら、バスを降りる。

すると。



「由乃」



真っ先に飛び込んできた、背の高い人影。

たった一週間かそこらの間会わなかっただけなのに、とても懐かしい人。

その人は優しい顔で微笑み、由乃を出迎えてくれた。



「おかえり、由乃」

「ただいま」



帰国する前夜に電話したときに、来なくてもいいなんて口では言ったけれど。

やっぱり、どこかで期待をしていたようだ。

令ちゃんの顔を見たら、帰ってきたんだって、ようやく実感が沸いた。

見慣れた街並みを見るより、聞きなれた言葉の行き交う中を歩くより。

由乃にとっては、令ちゃんと会う方が効くらしい。



「ほら。荷物を受け取って。

 車で叔父さんが待ってるから」

「えぇ?お父さんも来たの?」

「こら。そんなこと言わないの。

 由乃のこと一番心配してたのは、叔父さんなんだから」



そうなのだ。

修学旅行に出かける前も、壮行会なんて開いてくれちゃって。

その主犯は、実は由乃のお父さんだったりする。

お父さんはその席で、お酒をつい飲みすぎて潰れたという失敗までやらかして。

大人たちと別行動で帰ってきた由乃を捕まえ、しばらくの間絡んでいたのだった。

「元気になってよかった」とか、「思い切り楽しんでこい」とか。

「でもあまり無理するんじゃないぞ」とか。

同じことを、涙ながらに延々と繰り返して、そのまま寝てしまったお父さん。

お母さんはそんなお父さんの面倒を、呆れながらも見ていた。

令ちゃんと同じく、過保護もいいところなのだ。

お父さんは。

剣道部に入ると言い出したときも、お父さんはなかなか納得しなかった。

お母さんが取り成してくれて、令ちゃんもいるからと渋々承知してくれたのだ。



「一人娘だからね。由乃のことが、目に入れても痛くないほど可愛いんだよ」

「それを言ったら、令ちゃんだって支倉家の一人娘じゃない」

「うん。だから、うちのお父さんもなんだかんだ、娘には甘いと思うわ」



令ちゃんはほんの少し困った顔で、笑った。

由乃が令ちゃんに我侭言った時の表情に、少し似ているかもしれない。



「さぁ、行こう。話は、家に着いてからでもできるでしょう」











車の中で、お父さんは終始ご機嫌だった。

由乃の顔を見るなり、「お帰り」と満面の笑みを浮かべて。

どんなところで誰と何をしたのかを、ひたすら訊かれた。

ピサの斜塔に上った事だけは、お父さんには刺激が強そうなので黙っておいた。

何しろ、運転手だったわけだし。

動揺して手元が狂ったりしたら、大変なことになってしまう。



「それで。具合悪くなったりしなかったの?」



由乃の部屋で、荷解きをする傍ら、令ちゃんが言った。

荷解きといっても、大した作業はなくて。

中身を出して、洗濯物を洗濯機に放り込んだだけでおしまいだったが。



「別に」

「本当に?」

「イタリアに着いた日の夜に、ちょっと寝込んだだけ」

「全然『別に』じゃないじゃない。

 祐巳ちゃんと同室だったんでしょう?

 ちゃんとお礼は言ったの?」

「もう。そのくらい、言われなくてもできるわよ。

 子どもじゃあるまいし」



祐巳さんは、すごく心配してくれて。

でも、由乃の気持ちも分かってくれた。

申し訳なくて気弱になった由乃に、迷惑なんかじゃないって言ってくれた。

本当に、貴重な存在だと思う。



「祐巳さんには、感謝してるよ」

「そうね。意地っ張りで気が強い由乃の相手を、よくしてくれてるからね。

 私も、感謝してる」

「令ちゃん!」

「あはは。でも、本当だよ。

 由乃がなつくなんて、そんなにあることじゃないでしょう」



令ちゃんの言い方は面白くなかったけれど。

あまり反論もできないので、由乃は近くにあったクッションに八つ当たりをしておいた。

ぽすんと間の抜けた音を立て、クッションがへこむ。



「でもその日だけだったから。熱出したりしたの」

「うん。楽しめたみたいで、本当に良かった」

「楽しかったよ」

「知ってる。電話での由乃の声が、いつも元気いっぱいだったからね」



確かに、楽しかった。

祐巳さんや蔦子さん、真美さんと過ごした時間。

いつもと違う空間に戸惑いながらも、充実した毎日だった。

不満だったことなんて何一つなかったはずなのに。

今、こうして思い返すと、贅沢な考えがむくむくと大きくなる。



「でも、令ちゃんがいなかったから、ちょっと寂しかった」



そう言うと、令ちゃんは由乃の頭をそっと撫でてくれた。



「それは、お互い様」

「次に海外旅行するときは、令ちゃんと一緒がいい」

「いいよ。由乃の行きたいところなら、どこでも」











結局、その日の夜は、令ちゃんは由乃の部屋にお泊りした。

話しながら、いつの間にか由乃は眠ってしまったけど。

それはきっと、繋いでいてくれる令ちゃんの手が、温かかったから。

そういうことにしておく。















あとがき



帰国したその日の夜の、由乃んと令ちゃんでした。

この二人は、書いていて本当に楽しいです♪

この二人に限らず、姉妹は皆それぞれ楽しいのですけれどね。

由乃ちゃんの「令ちゃん」という呼び方が、可愛らしくて好きなのです。





さて。海外旅行といえば、時差ぼけ。

中国に行ったときは、三時間しか時差がないので、さほど苦労はしなかったのですが。

アメリカのときは、三日くらい引きずりましたね。

帰国したその日、夕飯はお寿司だったんですけど(笑)

夕飯が終わってごろごろしながらテレビを見ているうちに、気がついたら寝てました。

確か九時には寝ていたような気が。

それで、朝早くに目が覚めて。

それから二日間くらい、九時前に寝て六時前に起きるというおかしな生活してました。

昼寝しちゃったりもしてましたけどね・・・。

そんなわけで、当然学校もお休み。

よく寝て、精力的にお土産ばらまきに出かけて、また寝て(笑)




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2004/11/24 00:00 | Comments(0) | TrackBack() | SS

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