ちょっとだけ、息抜きです。
あ。由乃ん祭りの続きではないですし、これといって関連性もありません。
雨が降っていた。
昨日から続く長い雨。
朝の内は止んでいたが、どんよりとした怪しい雲行きはそのままで。
昼を過ぎて、また降りだしていた。
水音が、やまない。
今はどこも授業中、そしてこの雨のせいで、外を歩く人影は見当たらない。
私はこの温室で、いつかと同じように膝を抱えていた。
誰にも会えない。
誰にも会いたくない。
研究室に顔を出せばいるであろう学友たちにも。
そして、ここから見えるあの校舎のどこかで、教壇から響く声に耳を傾けているであろうあの子とも。
あの子はこの場所を知っているから、放課になる前にここを出なくては。
そんな事を考える余裕はあるのだ。
何もかもがどうでもよくなり、なすべきことにも手をつけずにいるような状態でも。
あの子を気遣うだけの理性は、まだ残っているのだ。
それを自嘲している自分と、安堵している自分と。
二人の私が、私を見ていた。
冷ややかな視線と、温い視線がせめぎ合って奔流を作り。
私はその中心で、ただ身を任せているだけだった。
流されていくわけではない。
私はどこへも行けないし、行きたいとも思っていないから。
膝を抱えて蹲り、自分が沈んでいくのを黙殺しているのだ。
ひたひたとせり上がってくる水面。
そのまま私を飲み込んで、消してくれたらいいのに。
半ば本気でそれを願いながら、私は静かに目を閉じた。
たゆとう水の流れが、聞こえる。
暗い水底で。
一筋の光も届かぬ場所で。
私は床をちょろちょろと滑る蟹。
しかし目を開ければ、そこにあるのは手入れの行き届いた花達。
温室にはいつも誰もいないのに。
何故か、か弱いはずの薔薇は美しかった。
すぐ傍にある、咲こうとしているつぼみを。
散らしてしまいたい衝動に駆られ、指を伸ばしたけれど。
一瞬誰かの顔がちらついて、私はその手を引っ込めた。
足元に転がっていた鞄を持ち上げる。
そして私は立ち上がり、雨の中を、傘もささずに走り出した。
折り畳み傘が、鞄の中にはあったけれど。
こんなままでは、バスにも乗れないことは分かっていたけれど。
道を走っていると、白いマリア像のある分かれ道まできた。
マリア像は雨に打たれ、けなげにもそこに佇んでいた。
白い滑らかな頬を、まるで涙がつたうように水滴が流れていく。
私はマリア像と向かい合っていた。
ずぶ濡れのまま、そうしていた。
遠くでチャイムの音がして、慌てて傘をさして歩き始めるまで。
あ。由乃ん祭りの続きではないですし、これといって関連性もありません。
雨が降っていた。
昨日から続く長い雨。
朝の内は止んでいたが、どんよりとした怪しい雲行きはそのままで。
昼を過ぎて、また降りだしていた。
水音が、やまない。
今はどこも授業中、そしてこの雨のせいで、外を歩く人影は見当たらない。
私はこの温室で、いつかと同じように膝を抱えていた。
誰にも会えない。
誰にも会いたくない。
研究室に顔を出せばいるであろう学友たちにも。
そして、ここから見えるあの校舎のどこかで、教壇から響く声に耳を傾けているであろうあの子とも。
あの子はこの場所を知っているから、放課になる前にここを出なくては。
そんな事を考える余裕はあるのだ。
何もかもがどうでもよくなり、なすべきことにも手をつけずにいるような状態でも。
あの子を気遣うだけの理性は、まだ残っているのだ。
それを自嘲している自分と、安堵している自分と。
二人の私が、私を見ていた。
冷ややかな視線と、温い視線がせめぎ合って奔流を作り。
私はその中心で、ただ身を任せているだけだった。
流されていくわけではない。
私はどこへも行けないし、行きたいとも思っていないから。
膝を抱えて蹲り、自分が沈んでいくのを黙殺しているのだ。
ひたひたとせり上がってくる水面。
そのまま私を飲み込んで、消してくれたらいいのに。
半ば本気でそれを願いながら、私は静かに目を閉じた。
たゆとう水の流れが、聞こえる。
暗い水底で。
一筋の光も届かぬ場所で。
私は床をちょろちょろと滑る蟹。
しかし目を開ければ、そこにあるのは手入れの行き届いた花達。
温室にはいつも誰もいないのに。
何故か、か弱いはずの薔薇は美しかった。
すぐ傍にある、咲こうとしているつぼみを。
散らしてしまいたい衝動に駆られ、指を伸ばしたけれど。
一瞬誰かの顔がちらついて、私はその手を引っ込めた。
足元に転がっていた鞄を持ち上げる。
そして私は立ち上がり、雨の中を、傘もささずに走り出した。
折り畳み傘が、鞄の中にはあったけれど。
こんなままでは、バスにも乗れないことは分かっていたけれど。
道を走っていると、白いマリア像のある分かれ道まできた。
マリア像は雨に打たれ、けなげにもそこに佇んでいた。
白い滑らかな頬を、まるで涙がつたうように水滴が流れていく。
私はマリア像と向かい合っていた。
ずぶ濡れのまま、そうしていた。
遠くでチャイムの音がして、慌てて傘をさして歩き始めるまで。
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